メタバースの土地に対して大きな期待と同時に、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
特に、最初に値段をつけて販売されるメタバースの土地が、うまく価値を維持できていない現状もあります。

この記事では、日本の江戸時代の街づくりをヒントにしながら、メタバースの土地価値の本質、今ぶつかっている壁、そしてこれからどうなっていくのかについて、少し掘り下げて考えてみたいと思います。

徳川家康が来る前の江戸は、広い湿地や草原が広がる、関東地方の静かな場所でした。
京都や大阪のような当時の中心地と比べると、まだ特別な価値が目に見える形で現れていたわけではありません。
いわば、可能性を秘めた「まっさらな土地」でした。

これは、今のメタバース空間と少し似ています。
広大なデジタル空間が広がっていますが、まだ十分に活用されていない場所も多い。
しかし、重要なのは「これからここで何ができるか」「どんな価値が生まれるか」という未来への可能性です。

江戸の運命を変えたのは、1603年の江戸幕府のスタートでした。
日本の政治の中心地になったことで、たくさんの人が江戸を目指すようになります。
全国の大名が屋敷を構え、参勤交代で人の行き来が生まれ、武士や商人、職人さんたちがどんどん移り住んできました。
この「人の集まり」こそが、街が発展していく大きな力になったのです。

メタバースにおいても、人々を引きつける「これは面白い!」「ここにいたい!」と思わせる何か(魅力的なコンテンツやコミュニティ、便利な機能など)が、ユーザーを集める最初の「きっかけ」になります。

人がたくさん集まっても、暮らしにくかったり、活動しにくかったりしたら、街は発展しません。
そこで江戸では、大規模な「街の土台づくり」、つまりインフラ整備が進められました。

  • 水害を防ぎ、土地を広げるための治水や埋め立て。
  • モノを運んだり、街をきれいに保ったりするための水路ネットワーク。
  • たくさんの人が安心して飲める水を届ける上水道。
  • 日本全国とつながるための道路網。

これらが整えられたことで、江戸は多くの人が快適に活動できる都市へと成長しました。

メタバースでいう「土台」は、プラットフォームの技術的な安定性や使いやすさだと考えられます。
スムーズに動くこと、見た目がきれいなこと、操作が分かりやすいこと、誰でもアクセスしやすいこと、そしてクリエイターが自由にモノづくりできるツールが揃っていること。
こうしたしっかりとした土台があってこそ、そこで様々な活動が花開きます

しっかりした土台の上にたくさんの人が集まった江戸では、経済がどんどん活発になりました。
日本橋を中心に市場が賑わい、全国からモノが集まる日本一の商業都市になりました。

そして、人が集まれば、自然と新しい文化も生まれます
歌舞伎や浮世絵といった、江戸ならではのエンターテイメントやアートが人々の心をつかみ、これがまた江戸の大きな魅力となっていきました。
経済と文化が発展することで、江戸はさらに多くの人を惹きつける「魅力的な場所」になっていったのです。

メタバースも、そこで行われる活動によって、その場所ならではの価値が生まれます。
クリエイターが作ったものが売買されたり、ユーザー自身が面白い企画を生み出したり、同じ興味を持つ仲間が集まって交流したり。
こうした活動が活発になればなるほど、そのメタバース空間は特別な意味を持つ「場所」になり、価値が高まっていくと考えられます。

では、メタバースの土地は、これからどうなっていくのでしょうか?
江戸の発展の歴史は、未来を考える上でもヒントをくれます。

  • 「結果として価値が決まる」流れへ: 江戸の土地の価値が、人々の活動の結果として徐々に上がっていったように、メタバースも、最初に値段を決めるのではなく、その場所がどれだけ魅力的になったか、どれだけ活発なコミュニティができたか、その「結果」として価値が評価されるようになるかもしれません。例えば、最初は安く、あるいは無料で土地を手に入れられて、そこで面白い活動をした人やプロジェクトに、後から価値がついてくる、というイメージです。
  • 「何ができるか」がますます重要に: 土地を持っていることで、具体的にどんなメリットがあるのかが、これからはもっと重視されるでしょう。例えば、特別なイベントに入れる、お店を開いて収益を得られる、仲間だけのコミュニティに参加できる、そこでしかできない体験ができる…など。「持っているだけで何もない」のではなく、「持っているからこそできること」が価値の源泉になります。
  • 長続きする仕組みづくり: 土地を売って終わり、ではなく、その場所で継続的に活動が行われ、生まれた利益がちゃんとコミュニティやクリエイター、そしてプラットフォームの発展に還元されるような、健全で長続きする仕組み(エコシステム)を作れるかが重要になります。

江戸が長い時間をかけて魅力的な大都市になったように、メタバースの価値も、きっと一歩一歩、人々の手によって育まれていくものなのだと思います。

江戸の街づくりが教えてくれるのは、計画性と、そこに住む人々の自由な活動が組み合わさることで、素晴らしい価値が生まれるということです。
メタバースの土地の価値も、プラットフォーム側の工夫と、ユーザーやクリエイターの創造力が合わさって、これから形作られていくのでしょう。

今のメタバースが抱える課題は、新しい技術や市場が成長していく過程での「黎明期の苦しみ」なのかもしれません。
大切なのは、短期的な価格の動きに振り回されるのではなく、そのデジタル空間が将来どんな「場所」になり得るのか、どんな可能性を秘めているのかという、長期的な視点で価値を「育てていく」意識を持つことではないでしょうか。

人々が集い、創造し、交流する「場」には、必ず価値が宿ります。
課題を乗り越えた先に、私たちの社会や生活を豊かにする、真に価値あるメタバース空間が広がっていることを期待します。

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